◆中小企業こそ活用したい「選択制確定拠出年金」

「選択制確定拠出年金」は、加入者が自身のライフプランに応じて、一定の金額を確定拠出年金の掛金として老後のために積み立てるか、給与(制度設計によっては賞与)として受け取るかを選択できる制度のことをいいます。ユニクロを展開するファーストリテイリング社が導入したことから「ユニクロ型」とも言われます。

  

制度の設計上、従来の基本給を「新基本給」と「手当(ライフプラン手当、生涯設計手当といった名称)」の2つに切り分け、「手当」の部分について、加入者が複数のパターンの中から選択できるようなたて付けにするケースが多いです。一定水準以上の賞与を安定的に支払える企業では、賞与を原資にすることもあります。

<選択制確定拠出年金のイメージ図>

選択制確定拠出年金は、給与(制度設計によっては賞与)を掛金の原資とすることもあり、少ない資金負担で退職金制度を構築できます。

これから人の定着をはかり、さらなる成長を目指すような中小企業にとっては、大企業と同様の制度を導入することが可能ということです。主なメリット、デメリットは以下のとおりです。


●主なメリット

①福利厚生の充実

選択制確定拠出年金という仕組みは、加入者の老後に向けた効率的な資産形成手段の一つとなり得ます。


主な理由は、

a)「掛金が課税対象にならない」、「運用益は非課税」といった税制上の優遇措置があること

b)確定拠出年金の掛金として充当したお金は、社会保険料算定上の「報酬」とみなされないため、社会保険料の節減が可能になる


2つです。


加入者の額面の収入(いわゆる年収)は、確定拠出年金の掛金に充当した分だけ従前と比べて下がります。しかし、手取り収入の減少額は、それに比べて小さくなります。通常個人は、額面の収入から税金(所得税・住民税)と社会保険料を差し引いた後のお金で資産運用を行うことになりますが、確定拠出年金は、それらが差し引かれる前のお金で始めることが可能になります。


②社会保険料の節減効果

確定拠出年金の掛金は、社会保険料算定上の「報酬」とみなされません。

制度が活性化し、積極的に活用する人が増えれば、企業の社会保険料の負担も軽減できます。社会保険料の保険料率が上昇傾向にあることを鑑みますと、この固定費(法定福利費)節減の効果は、企業経営上、非常に大きいといえます。

 

③人材採用の一助として

会社は「国の法律に基づく企業年金制度」を導入していることを対外的に謳えるため、人を採用する上でのプラス効果が期待できます。企業型確定拠出年金の加入していた人が、60歳になる前に離職・転職される際に、何の手続きもせずに放置し、国民年金基金連合会に自動的に移換されているケースが散見される中、中小企業でも制度を導入していれば、その受け皿となりやすいといえます。


④その他

中小企業退職金共済とは異なり、加入を希望した者のみでも実施可能。役員も加入できます。所得水準の高い経営者には、節税しながら資産形成できるといった点がメリットになり得ます。

 

●主なデメリット

①運営管理に伴うコスト

制度の運営上、運営管理機関等に支払うコストが発生します。また、加入者に対して一定の投資教育を行うことが義務づけられていますので、その対応を行う必要があります。

 

②給付が原則、60歳以降

確定拠出年金の仕組みで積み上げたお金(積立金)は、原則60歳以降にならないと受け取ることができません。60歳になる前に受け取れるのは、加入者が、a)死亡したとき、b)かなり重度な障害状態になったとき、c60歳になる前に離職・転職する際に一定の要件を満たしたとき(要件を満たすのはかなり難しい)の3つのケースのみです。

現状では、“老後に向けた強制的な貯蓄制度”といった意味合いが強いといえます。 


③社会保険料の負担が下がることでのマイナス面

厚生年金保険料の負担が下がる(≒平均標準報酬額が下がる)ことにより、老齢厚生年金(報酬比例部分)の受給額が少なくなります。公的年金は終身年金なので、何歳まで生きるかによってその損得は変わりますが、就労時の社会保険料の節減額や税制上の優遇を勘案すると、ほとんどのケースで確定拠出年金を上手に活用したほうが、一生涯の手取り額は多くなります。他にも傷病手当金、失業手当の額にマイナスの影響が出る可能性はあります。


上記の点も含め、選択制確定拠出年金のメリット・デメリットをまとめたのが以下の表です。